今回紹介するのは、中野でいち先生『hなhとA子の呪い』(リュウコミックス)。
世界を救う切り札になったり、
なんとなく素晴らしい至純の価値観として掲げられることの多い「愛」。
人間の繁栄に不可欠ながら、
なんだか汚らわしいもの・隠すべきものとして扱われている「性欲」。
これはそんな「愛」と「性欲」に翻弄される者達の物語です。
■性欲を否定する男■
主人公の針辻真はブライダル企業の若き社長。
性欲を真実の愛を障害となる「人類が捨て去るべき最低最悪の呪いだ」と断じ、
「私の中には性欲なんて一滴もありはしないさ」と言い放ちます。
自分の信じることに一切に疑問も揺らぎもない、傲岸不遜な、
でも何だかちょっとアンバランスな男。
そんな彼が結婚相手に選んだのは彼の秘書を務める南雲女史。
彼女は何度も針辻からのプロポーズを断っているようですが、
ただ彼のことは嫌いではないようで――?
■愛の呪縛と性欲の開放■
そんな性欲全否定の針辻の前に現れた謎の幼女・A子。
絶対の信念で性欲を否定する彼の耳に
「その信念は嘘だ」
「本当は南雲とセックスがしたいだけでしょう?」
と繰り返しささやきます。
数々のエロ妄想を掻き立てる囁きに反応する体。
針辻の信念は少しずつ崩れ、やがて完全に崩壊します。
自分の愛は偽物だったのか。
周りの女はみんな淫乱なんじゃないか。
そんな性欲を否定してきた自分が薄汚れた人間じゃのではないか。
「もはや俺にはあらゆる事がエロいか逆にエロいかとしか思えない…」
愛に囚われた男が吐露した悲痛な自己否定。
A子の言葉によって狂っていく針辻の姿は滑稽でもあり、
そしてこの上なく痛々しく、そしてどうしようもなく悲しくて、
読むものの心にグサグサと刺さってきます。
彼の崩壊過程でのサイケデリックで酩酊感あふれる
まるで悪夢のような演出もすさまじいインパクトです。
■愛と性は切り離せるのか!?■
常人では切り離せないからこそ、誰もがなんとなく
「バランスが大事」的ななあなあで済ませてしまっている「性欲」と「愛」。
これを峻別してしまった故に生まれる
針辻の苦悩の先には何があるのか――。
これはめちゃくちゃ気になります。
そして、おかしくなってしまった針辻をめぐる南雲とA子二人の女。
どちらもアプローチは異なれど針辻を心配しているようですが――。
ともに針辻と過去に関りが深かったようですが一体何が。
この辺はコミックスを読んでいただいて、そしてこれから先の展開に注目ということで。
彼女たちの存在は針辻にとって祝福なのか、それとも呪いなのか――。
表裏一体の愛と性。
それに縛り付けられ、囚われた男が演じる悲喜劇。
『hなhとA子の呪い』、オススメです!
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~~中野でいち先生の別作品もおすすめ~~
中野でいち先生の前作『十月桜』も人の心の光と闇を描いた傑作。
こちらもとっても面白いのでぜひ!
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そしてtwitter発表されていた脳内エッセイシリーズ
「後輩ちゃんに聞いてみよう」も『コミックリュウ』のWebで連載化!
読むた人に我が身を振り返ってぐえー! とせしめるエグい、でも笑ってしまう刺突系エッセイです!